2011/10/10

読了した書籍のエッセンス(8) 「デジタル教科書革命」/中村伊知哉・石戸奈々子

どうやら絶版になっているらしくアマゾンで新品が手に入らなかったので、やむなく図書館で借りることに。手元に書籍が残らないので、これまでに比べて、少し丁寧に記録。

まず、目次は下記の通り。
◆ デジタル教育が日本を救う
 ■ 教育の情報化に出遅れた日本/デジタル教育は日本を滅ぼす?/
   近未来の授業とは/情報社会にふさわしい教育改革/
   21世紀に求められる能力/日本は情報化先進国/
   教育情報化政策の新展開/デジタル教科書は教科書ではない?/
   学校の情報化事情/教育情報化のメリット/情報化がもたらす効率性
   
◆ 世界はもうここまで進んでいる
 ■ 世界をリードする韓国/政府主導のシンガポールと台湾/
   先端を切り開くアメリカ/学校主導型のイギリス/
   マゼランのポルトガル/青山小学校のデジタル授業/
   ニンテンドーDSの活用/公立小学校のチャレンジ/NPO法人「CANVAS」
◆ 電子書籍端末の現在
 ■ 百花繚乱の情報端末/iPadの教育利用/電子書籍元年/
   教育用アプリケーション/創作アプリケーション/教育クラウド
◆ 進化するデジタル教材
 ■ 教科書会社の戦略/デジタル教材の開発/
   eラーニングとOCW(Open Course Ware))/
   広がるシリアスゲーム/モバイル学習の展開/
   新聞の教育利用/テレビと映画の映像教材/
   配信ビジネスの現状/電子書籍戦争の勃発/教材2.0
◆ これからの課題
 ■ デジタル教科書の開発/普及の課題/総合的な政策/
   デジタル教科書教材協議会

そして、エッセンスは以下の通り。

◆ 日本におけるデジタル教科書の導入計画
 ■ 日本の学校におけるPCとLANの導入状況(2010年3月末)
   PC 1台あたり6.4人の生徒/普通教室の校内LAN 81.2%
 ■ 政府の目標: 2020年には1人1台の情報端末とデジタル教科書の導入
  - 小学校706万人、中学校360万人に情報端末とデジタル教科書を
  - 同じ水準を韓国は2013年に達成目標
  - 「日本の教育現場のICT活用は、フィリピンやタイにも大きく劣る。
    現場で使われているパソコンの性能面でも、実際の使われ方にしてもだ」
     (陰山英男立命館大学教授)
  - 「デジタル教科書教材協議会」は2015年に実現すべきと言っている
◆ 企業の人材採用基準
 ■ 経団連「新卒採用の選考にあたって重視した点」アンケート調査結果
  - コミュニケーション能力 81.6%
  - 主体性 60.6%
  - 協調性 50.3%
  - …
  - 学業成績 5.4% → 企業は他の項目を重視している
◆ IT戦略本部「新たな情報通信技術戦略」
 ■ 情報通信技術を活用して、
  - 子ども同士が教え合い学び合うなど、双方向でわかりやすい授業の実現
  - 教職員の負担の軽減
  - 児童生徒の情報活用能力の向上が図られるよう、情報通信技術を活用して、
    21世紀にふさわりしい学校教育を実現できる環境を整える
◆ 内閣「新成長戦略」
 ■ 「子ども同士が教え合い、学び合う『協働教育』の実現など、教育現場(中略)
    における情報通信技術の利活用によるサービスの質の改善や利便性の向上を
    全国民が享受できるようにするため、光などのブロードバンドサービスの
    利用を更に進める」
◆ 「学校教育の情報化に関する懇談会」
 ■ 文科省副大臣が発起人となって2010年4月に立ち上げ
 ■ 座長 慶應義塾大学 安西祐一郎教授
 ■ 同懇談会が発表した「教育の情報化ビジョン」(骨子)
  - 「我が国の子どもたちにとって課題となっている思考力・判断力・表現力
    などを育むためには、各教科において、基礎的、基本的な知識・技能を
    しっかりと習得させると共に観察・実験やレポートの作成、論述といった
    知識・技能を活用して行う言語活動をより充実させる必要がある。この点、
    情報活用能力を育むことは、必要な情報を主体的に収集・判断・表現・
    処理・編集・創造・表現し、発信・伝達できる能力などを育むことである。
    また、基礎的・基本的な知識・技能の確実な定着とともに、知識・技能を
    活用して行う言語活動の基礎となるものであり、「生きる力」に資する
    ものである」
◆ 普及に向けた課題
 ■ デジタル教科書、教材を指導にうまく活用できない教員への対応
 ■ 校務の情報化による教員の自由時間創出
 ■ 教科書検定制度や教科書無償給与制度、著作権などの諸制度
◆ 世界の状況
 ■ 韓国
  - 2001年から2005年にかけて、PC1台あたり生徒数5人、カリキュラムの20%
    でICTを活用、毎年1/3の教員にICT研修を実施し認証制度を導入、昇進
    など人事考課にも反映、デジタル教材や授業案の開発、サイバー倫理
    教育の実施といった目標を掲げて推進している
 ■ シンガポール
  - 2003年からの4年間で20億ドル、生徒一人あたり年間650ドルを投じて、
    カリキュラムの30%でOCTを使う状況を実現。全国で6校を指定し、
    各生徒にタブレットを配布、宿題も自宅に持ち帰ったタブレットで
    実施している

※この書籍が出版された背景には、田原総一朗氏のデジタル教育を否定した書籍の出版があるようで、内容的にもデジタル教材推進派の反論本という趣きが否定できない。とはいえ、デジタル教材を使ったほうが、子どもがワクワクしながら勉強できる環境を整えられる可能性が高まるのだから、紙以外の媒体を否定する理由が理解できない。この本に対するアマゾンの書評にタブレットなど配ったら、子どもが騒いで授業にならないと書いている人がいたが、子どもがそんなワクワク感を持っている中で授業ができない教師など必要ないのではないか、と私は思う。すべての子どもに等しくワクワク感を与えることなどできないかもしれないが、それを理由に全員からその可能性を奪って、静かで退屈な授業を選ぶなど教師の考えることではなかろう。今日は少し脱線してしまったけれど、私たちがやり直したくなるような魅力的な小中学校にしてもらいたものである。