intangible 【名】無形のもの。 数値としてバランスシートに表記できない資産のこと。近年、長期指向の投資家の間でとりわけ注目されている視点である。もう少し具体的に言えば、組織のありようが持つ価値や個々の人が持つ価値を資産として捉える考え方で、それをIT投資によって高めていくにはどうあるべきか…ということが本書の主旨。
目次は下記の通り。
◆ コンピュータ、生産性、デジタル組織
◆ 計算機能を越えて: 情報技術、組織変革、企業業績
◆ IT生産性の格差
◆ インタンジブル・アセット コンピュータと組織的資本
◆ コンピュータ導入による生産性の向上 企業レベルデータによる実証結果
◆ デジタル・ビジネス・トランスフォーメーション「マトリックス・オブ・チェンジ」に学ぶ
少し長くなってしまったけれど、そのエッセンスは以下の通り。
◆ デジタル組織(ITを活用してIT部門以外での機構改革を実現している組織)の七つの原則
■ アナログからデジタルの業務プロセスに移行すること→最低限必要な条件
■ 意思決定責任と決定権を分散すること→人材の育成が重要
■ 社内の情報アクセスを促進し、コミュニケーションを活発にすること→情報共有
■ 個人の業績に基づいた給与体系にし、それを業績に基づいた報奨制度とリンクさせること
■ 事業を絞り込み、組織の目標を共有すること→利益の源泉にならない製品ラインを廃止し、少数の主力製品に事業を絞り込む
■ 最高の人材を採用すること
■ 人的資本に投資すること→社員教育や研修にもっと費用と時間をかけること
◆ デジタル組織が持つ特性
■ 多数の定常業務の自動化
■ 高スキルの労働力
■ 意思決定の分散化
■ 水平、垂直方向へのよりオープンな情報の流れ
■ 業績に基づく強力なインセンティブ
■ 教育や採用活動の重視
◆ IT投資における五つの仮説
■ コンピュータ資本に投資された一ドルは、その他の計測可能な資産が制御された場合、企業の市場価値を一ドル以上増加させている。
■ コンピュータ投資は、観察可能な組織的業務環境への投資の増加と相互関連がある。
■ 3これらの業務慣行が企業の生産的資産の一部を表す場合、業務慣行は市場価値の増加とも相互関連がある。
■ このような特定の組織的業務慣行とコンピュータ資本投資を組み合わせた企業にインタンジブル・アセットが最も多く見られる場合、当該企業は同じ業務慣行を個別に採用している企業に比べ市場価値が高い。
■ コンピュータ導入による情報化及び特定の組織的業務慣行と相互関連があるインタンジブル・アセットが存在する場合、このインタンジブル・アセットのリターンを反映して、将来の生産高は増加する。
◆ マトリックス・オブ・チェンジ
企業が置かれた成長ステージの違いによって、事業変革の大胆さ(変革を進める規模やスピード感)に違いが出てくる。これを「見える化」するためのツールとして本書が提案しているのが、「マトリックス・オブ・チェンジ」
■ 提案されている事業方式の採算性評価
■ 一連の変革設計(原稿の方式からの移行手順)
■ 新たな方式の導入場所の選択(例えば、新規サイトや内部サイト)
■ 変革速度の最適化(速くか遅くか)
■ 利害関係者及び付加価値の源泉についての理解
◆ 結論(と銘打たれたセクションからのキーメッセージの抜粋)
デジタル技術による事業の次の段階においてインターネットを効果的に活用することは、さらに重要な問題となるだろう。ドットコム時代の最盛期にインターネットについて誰もが考えていたことは、既存企業は、小規模のオンライン新興企業を模倣する、あるいは新興企業との提携を目的に特化した事業部門を別途設立し、迅速な市場参入に向けて、「新たなスタートを切る」べきであるということであった。(中略)インターネットとデジタル化による事業革新の次の波では、既存の事業の業務形態を切り捨てるのではなく、既存の業務形態間の補完関係を活用することの方がより重要となる。
現在のデジタル事業の環境では、ほとんどの企業はいまだに代替段階に留まっているといえる。このような代替方法では、予定されていた付加的便益はあるものの、新たに導入されたデジタル事業の業務形態が組織の他の側面を阻害する場合がある。しかし、デジタル化による事業の究極的な力は、企業と経済を変革することだ。ここでの教訓は、情報技術は事業のやり方を変革できるが、単に既存の業務形態に情報技術をのせるだけでは不十分だということである。企業は業務の進め方や価値創造の仕方についてもっと広い検知から検討する必要がある。
→それを具体的に視覚化するのが、「マトリックス・オブ・チェンジ」ということでもある。
※とても興味深い視点なのだけれど、マトリックス・オブ・チェンジは思ったより複雑で、作るにはそれなりの知見が要求される。エッセンスと言いながらここまで長くなってしまったところからも、よく言えば複雑な内容、悪く言えばまとまりに欠ける印象。「煎じ詰めたら、一文にまとめることができました」というほど単純な本ではない、というところ。